空気が乾燥すると途端に肌がカサカサしてきて痒みを感じる…乾燥肌や敏感肌の人に多いお悩みです。乾燥しがちな秋冬を中心に肌が荒れやすく、我慢できずに掻いてしまい、さらに肌の状態が悪化する悪循環に陥ることも。
また、肌の痒みが悩みという人に多いのがアトピー性皮膚炎という疾患ですよね。そこで今回は、アトピー肌の人も実践できる保湿術について紹介します。痒みが出るほどの乾燥に長年悩んでいるという人の肌質改善に役立てていただけると嬉しいです。
この記事のポイント
保湿しても痒い…”アトピー”とは?
まずはアトピー性皮膚炎について理解しておきましょう。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎とは、痒みのある湿疹を主な症状とする皮膚疾患です。湿疹は顔だけでなく、首や手足の関節部など皮膚の薄い部分にできやすいのが特徴で、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返します。
皮膚の状態が悪化する要因は人によってさまざまで、ダニやハウスダストなどのアレルギーによる場合もあれば、生活環境の変化や体調不良などによる免疫力の低下、ストレスなどを契機に悪化する場合もあります。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療には、次の3つの柱があります。
①薬物療法(外用薬・内服薬・注射薬を使って皮膚の炎症を抑える)
②環境整備(悪化要因を特定し、可能な限り排除する)
③スキンケア(皮膚を清潔に保つと同時に、保湿によりうるおいを保つ)
皮膚科での治療だけでなく、生活環境の見直しやスキンケアも改善には大切な要素。特にスキンケアは症状が悪化しているときだけでなく、症状が軽いときも続けていくことが大切とされています。
この3本柱を継続することで少しずつ症状を緩和し、薬物療法を止めても日常生活に支障がないレベルまで改善することを目指していきます。
乾燥すると肌が痒くなるのはなぜ?
アトピー性皮膚炎の人に限らず、乾燥すると肌が痒くなってしまうことはありますよね。これはなぜなのでしょうか。
通常、皮膚の表層にある「角質層」がバリアの役割を果たし、紫外線や雑菌などの外部刺激からお肌を守っているのですが、肌にうるおいが不足した状態ではこの「バリア機能」が正常に働かず、外部刺激に対して過敏に反応してしまいます。
結果として痒みが起きやすくなったり、肌荒れを引き起こしたりといった肌トラブルにつながります。肌を乾燥から守ることは、肌の健康や美しさを保つために必要不可欠なのです。
アトピー肌でもOK!効果的な保湿ケア
ここからは、自宅でできる保湿ケアのポイントを紹介します。日常生活の中でちょっとしたことに気を付けるだけで、保湿の効率が大きく向上しますよ。
入浴時のポイント
しっかり保湿をするうえで保湿剤を塗ることも大切ですが、見落としがちなのが「入浴」です。
入浴により体温が上がると血流がスムーズになり、肌の代謝促進につながります。シャワーで済ませることの多い人は、ぜひ浴槽に浸かる習慣をつけましょう。
このとき注意したいのが、浴槽に入れるお湯の温度。「熱いお風呂が好き」という方もいると思いますが、肌への刺激になり痒みを誘発する場合があります。乾燥対策としては、40度未満度のぬるめがベストです。
また湯船に浸かる時間は15分~20分までに留めましょう。長時間の入浴は肌に必要な皮脂を奪ってしまい、かゆみを増大させる恐れがあります。
入浴には意外とエネルギーを消費するため、長湯によって知らず知らずのうちに疲れを溜めてしまうことも。適度な入浴時間で効果的に疲れがとれれば、ストレス解消にもつながりますよ。
最後に入浴剤について。入浴剤は保湿効率を高めてくれる場合もありますが、配合成分によっては保湿効果が薄いばかりか、肌に合わずにさらに痒くなってしまうこともあります。
保湿を目的とする場合は、以下の特徴を持つ入浴剤がおすすめです。
・低刺激処方の入浴剤
・バスミルクなど、保湿効果の高い入浴剤
・セラミドやヒアルロン酸など、保湿成分を配合した入浴剤
・痒み対策には、グリチルリチン酸2Kやアラントインなどの抗炎症成分も◎
もちろんどんな成分も人により肌に合わない場合があるため、アトピー肌や乾燥肌・敏感肌の方は慎重に選ぶようにしましょう。
また人気の高い温泉成分や炭酸系の発泡タイプの入浴剤は、肌への刺激となる場合があるので注意が必要です。
洗浄時のポイント
アトピー性皮膚炎の改善には、保湿の前に、汗や古い皮脂、細菌などをしっかり洗浄することが大切です。ただし洗浄力が強すぎる洗顔料やボディソープを使うとそれ自体が刺激となり、症状の悪化につながることがあるため注意が必要です。
アトピーに限らず、乾燥肌や敏感肌など乾燥による痒みが起きやすい人は、やさしく洗うことを徹底しましょう。
髪・顔・身体、どこを洗う時も洗浄料はしっかり泡立てて使うのが基本です。
泡立てるタイプの洗浄料を原液のまま皮膚にのせると、洗浄成分が強くなりすぎたり、肌を擦りがちになったりするためやめましょう。泡立てネットなどを使って濃密な泡を作り、泡で肌をなでるようなイメージで洗うようにしてください。
ジェルタイプなど泡立てないタイプの洗浄料を使う場合も、肌を擦らずやさしく洗うことを心がけましょう。
炎症がある場合やかゆみがひどい部分は、洗浄料を使わずにぬるま湯ですすぐだけでOKです。
また最後にしっかりとすすぎを行い、シャンプーやボディソープなどが肌に残らないよう注意しましょうね。
入浴後はすぐ保湿
保湿剤を塗るのは、基本的には入浴後、水分を拭き取ってからがおすすめです。入浴後の肌は柔らかく水分が逃げやすい状態になっているため、できるだけ手早く保湿して乾燥を防ぎましょう。
保湿剤が肌に馴染んで、バリアを張ったようなしっとり肌になれば、十分保湿されているサイン。
浴室を出てから20分以内にケアが完了できていれば、全身保湿は1日1回でも十分な場合もあります。ただし、手や足首、ふくらはぎなど部分的に乾燥が気になる場合には、日中もこまめに保湿するのを忘れないようにしてください。
保湿剤はタイプで使い分け
保湿剤はテクスチャーによって大きく5つに分類されます。
それぞれ使い勝手が異なりますので、季節やタイミングによって使い分けると良いでしょう。
半固形タイプ | ワセリンや保湿バームなどがこれにあたります。 肌の表面を覆うことで水分の蒸発を防ぐことができる反面、べたつきが強いのがデメリット。 特に乾燥が気になる箇所に部分的に使うのがおすすめです。 |
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クリームタイプ | 保湿剤として最も製品数が多く、油分と水分がバランスよく入っているタイプです。 水分の蒸発を防ぎながら、肌内部にうるおいを与えることもできます。 入浴後の保湿として全身に使うなど活躍の場が多いので、乾燥肌の方は常備しておきましょう。 |
乳液タイプ | クリームタイプよりも軽めで、肌に伸びやすいタイプの保湿剤です。 クリームのべたつき感が気になるという方には使いやすいでしょう。 ただしその分水分の蒸発を防ぐ効果は弱いものが多いため、こまめに塗り直しを行ってください。 秋~春はクリーム、夏は乳液と使い分けるのもおすすめです。 |
オイルタイプ | ほとんどが油分で作られているタイプの保湿剤です。 クリームより伸びやすく、皮脂膜を強化して乾燥をしっかり食い止めてくれます。 また肌を柔らかくする効果もあり、ローションの前のブースターとして使うこともできます。 |
ローションタイプ | 油分をほとんど含まない保湿剤です。 水分を保持する力はほとんどありませんが、肌内部にうるおいを与える機能が高いのが特徴。 上からワセリンやクリームなどを重ねることで、より高い保湿効果を発揮します。 |
保湿クリームはムラなく伸ばす
保湿クリームを使用する場合は、たっぷり手に取り、手のひらで軽く温めてから使いましょう。容器から取り出してそのまま肌にのせるよりも伸びが良く、ムラができにくくなります。
塗り伸ばす方向は「体の先端から心臓へ」が基本。脚の場合は足の裏や指先から始まり、足首、ふくらはぎ、ひざ、太もも、お尻と上がっていくイメージです。
こうすることで、むくみの軽減にも役立ちます。肌を擦らないよう、優しく伸ばしてください。
アトピー肌でもOK!美容皮膚科でできる保湿ケア
主に顔に対しての治療になりますが、美容皮膚科にも肌の保湿に役立つ施術があります。自費診療にはなりますが、乾燥肌の改善だけでなくアトピー性皮膚炎の症状緩和につながったケースもありますので、プラスアルファの治療がしたいという方は検討してみてください。
ヒアルロン酸注入(ボライトXC)
ヒアルロン酸注入と聞くと、シワ改善や骨格形成の施術というイメージを持たれている人が多いですが、実は肌質改善にも役立ちます。
ヒアルロン酸は元々肌に存在する成分で、ハリやうるおいを保つ役割を果たしています。加齢や外部刺激により減少したヒアルロン酸を肌に注入することで、肌の保水力を高めることにつながるのです。
ヒアルロン酸にはさまざまな種類がありますが、恵比寿アズクリニックでは、厚生労働省より製造販売了承を得たアラガン社の製剤ジュビダームビスタ®シリーズを使用しており、中でも肌の保湿や肌質改善には、最も柔らかいボライトXCが適しています。
1グラムで6リットルもの水分を保持できることが報告されており、1度注入すれば約9カ月間と長期で効果を維持することができます。
ハリや弾力の向上といった美容面の効果だけでなく、肌のうるおいが保たれることでバリア機能が高まり、乾燥による痒みの緩和にも役立ちます。
エレクトロポレーション
肌に薬剤を塗布した状態で微弱な電気を流すことで、有効成分を肌の奥深くに浸透させる施術です。施術中の痛みやダウンタイムはなく、定期的に受けていただくことで肌質改善に役立ちます。
薬剤は肌悩みによってさまざまですが、保湿にはコラーゲン生成と肌回復を促すペップビューが特におすすめです。
公式YouTubeでは施術の様子をご紹介しています。
まとめ
痒みはとても辛い症状のため、毎年秋冬の乾燥シーズンが憂鬱になってしまうという人も多いと思います。
しかし日常的に保湿ケアを続けることで、少しずつ乾燥に強い肌を作っていくことができるはず。痒みが気になり出してからではなく、ぜひ今日から意識してみてください。