シミ治療にはさまざまな方法がありますが、中でも近年注目されているのがピコレーザーによる治療です。
今回はシミ取り施術に焦点をあて、ピコレーザーと従来のレーザーとの違いや、施術の流れ、施術後の経過などについて解説していきます。
この記事のポイント
シミ取りをするなら知っておきたい「ピコレーザー」
ピコレーザーの「ピコ」とは時間の単位を示しており、「ピコ秒レーザー」「ピコセカンドレーザー」などと呼ばれることもあります。まずはそんなピコレーザーについて詳しくご紹介ししょう。
ピコレーザーの特徴
「ピコ秒」とは1兆分の1秒というとてつもない速さを指します。ピコレーザーとは、この速さで照射できるレーザーを搭載したマシンということです。
ナノ秒（10億分の1秒）単位で照射を行う従来のQスイッチレーザーなどと比べると、1000分の1の速さということになります。これにより、周辺組織に熱ダメージを与えにくく、比較的ダウンタイムを抑えながら施術することが可能です。
また濃いシミだけでなく、従来のレーザーでは反応しにくかった薄いシミにも対応できる点も、ピコレーザーのメリットです。
ピコレーザーでできること
ピコレーザーで行える治療はシミ取りだけではなく、出力などの違いにより主に3パターンの施術方法があります。
ピコスポット
いわゆるシミ取りレーザーのこと。
レーザーをピンポイントに照射し、ターゲットとなる色素粒子を粉砕します。老人性色素斑（一般的なシミ）や雀卵斑（そばかす）などの治療に適しており、1度で大きな変化が得られます。
その反面、施術後は皮膚が軽い火傷を負ったような状態になるため、ダウンタイムが重くなりがちな点がデメリットと言えます。
またシミの状態や種類によっては1回で取り切れず、複数回の施術が必要になる場合もあります。
ピコトーニング
スポット照射よりも広い範囲に低出力でレーザーを照射する施術です。
1度の施術で大きな変化を得ることはできませんが、施術回数を重ねることで少しずつメラニン色素を分解・排出します。
シミ・くすみだけでなく、スポット治療が適応外となる肝斑の治療にも使用できます。
ピコフラクショナル
ピコスポットとピコトーニングがシミ治療をメインとするのに対し、ピコフラクショナルは毛穴や小ジワの改善を主な目的としています。
高密度のレーザーを照射した衝撃波により皮膚内部に微細な空洞を作り、その刺激により肌を活性化させます。ダメージ回復の過程でコラーゲン産生が促進されるため、毛穴開きの改善に人気です。
またピコトーニングと同日に行うことで相乗効果が生まれ、肝斑がより改善したという例もあります。
多少点状の内出血を伴う場合がありますが、肌表面へのダメージはないため直後からメイクが可能です。
肌の状態に応じて照射方法を選ぶことで、的確に肌悩みを改善に導くことができるでしょう。
恵比寿アズクリニックのピコレーザー｜エンライトンSR
当院では、アメリカのキュテラ社が開発したピコレーザーマシン「エンライトンSR」を使用しています。アメリカで食品や医療器具の安全性を審査するFDAの承認を得ているほか、日本でも厚生労働省の認可を受けており、日本人の繊細な肌質にも安全に照射することができます。
恵比寿アズクリニック公式YouTubeでは、当院ピコレーザー施術について詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
▶詳細 https://az-clinic.tokyo/picolaser/
光治療との違い
シミ取りレーザーと並び人気なシミ治療として、フォトフェイシャルに代表される「光治療」があります。この二つの大きな違いは使用される光の種類。
光治療は、複数の波長の光を組み合わせて照射しています。これによりシミ以外にも、赤み・くすみ・毛穴などさまざまな肌トラブルにアプローチできる点がメリットです。
特に恵比寿アズクリニックで使用しているフォトフェイシャルマシン・ステラM22は、フィルターを付け替えることで特定の波長が強めることができるため、ターゲットを絞った照射も可能です。
ただしレーザーに比べるとパワーは控えめで、複数回の治療が必要になります。また肝斑に対しては効果が限定的で、高出力で照射した場合には悪化させるリスクもあります。そのため当院では、肝斑がある場合にはピコトーニングをお勧めすることが多いです。
一方ピコレーザーによるシミ取り（ピコスポット）は、特定の波長を単一で使用します。メラニン色素に対してより高い効果を発揮するため、強力にシミを取り除くことが可能です。
シミの種類や状態によっては1回で大きな変化を出すことができ、その分ダウンタイムが重めです。
| ピコスポット （エンライトンSR） |
フォトフェイシャル （ステラM22） |
|
| 波長 | 532nm/1,064nm | 500～1,200nm程度 |
| 施術対象 | シミ、アザ | シミ、くすみ、赤み 小ジワ、毛穴 など |
| 施術回数 | 1～数回 | 5～10回 |
| ダウンタイム | 1～2週間 | ほぼなし |
▶フォトフェイシャル詳細 https://az-clinic.tokyo/photofacial/
ピコレーザーを使ったシミ取りの流れとダウンタイム
シミ取りを検討している人にとって最も気になるのが、ダウンタイムではないでしょうか。ここでは実際の施術の流れや経過について、具体的に紹介していきます。
シミ取りの流れ
ピコレーザーでシミ取りを行う際の流れをご紹介します。なお、こちらで紹介する内容は当院の方針に則したものであり、クリニックによって流れが異なる点にご留意ください。
①診察
医師がシミの種類や状態を見極め、ピコレーザーでのシミ取りが適切かどうかを判断します。
また、最終的にどのような状態を目指したいかといった希望や、それに必要な施術回数、ダウンタイムなどについての説明を受け、施術内容をすり合わせていきます。
②レーザー照射
シミに対してピコレーザーを照射します。施術中はゴムに弾かれたような痛みや灼熱感が伴う場合が多いです。
施術時間としては、シミの個数や大きさによって異なりますが、レーザー照射自体は10分程度で完了する場合がほとんどです。
③照射部の保護・アフターケア
レーザー照射後の皮膚は軽い火傷を負ったような状態で、赤くただれたような見た目になっていることが多いです。この後の流れはレーザーの出力やクリニックごとの方針によって異なりますが、恵比寿アズクリニックの場合は照射部にテープを張り付けて保護します。
最低1週間はテープによる保護を行い、その間軟膏を塗布することで炎症を防ぎます。
④再診
当院では施術1～2週間後に必ず再診を行い、肌の状態を確認します。この頃には照射部が黒っぽいカサブタとなっています。
テープをはがす際にカサブタが一緒に剥がれる場合が多いですが、残った場合も洗顔など日常的なスキンケアを行う中で自然と剥がれていきます。
かさぶたが剥がれた部分は元の肌色より薄い白～ピンク色になっており、次第に自然な肌色に戻ります。
シミ取り後のダウンタイム
ピコレーザーによるシミ取りのダウンタイムは、一般的に1～2週間程度です。この期間はテープでの保護が必要だったりカサブタが目立ったりと、治療を受けたことが周囲にバレやすくなります。
照射部へのメイクが可能となるのはカサブタが剥がれてからで、それまでは外出がしにくいと感じる人も多いです。
またこの期間が過ぎてからも、紫外線対策には普段以上に気を遣う必要があります。半年～1年程度は「絶対に焼けない」と意識して対策を行いましょう。
シミ取りレーザーの経過写真
複数のシミに対してピコスポットの施術を行った症例です。一般的なシミ（老人性色素斑）とともに、ADMと呼ばれるシミが混在しています。ADMは「アザ」とも呼ばれ、真皮層にメラニンが沈着した状態。基本的に1回で取り切るのが難しいタイプです。
こちらの症例の場合、これ以前に複数回ピコスポットを受けた経験があったため、今回の施術でADMも改善が見られました。
炎症後色素沈着について
炎症後色素沈着は、シミ取りレーザーの代表的な副反応のひとつです。
レーザーを照射した肌は軽い火傷を負ったような状態であり、そのダメージ回復の過程でメラニンが過剰に生成されることがあります。それにより起きる色素沈着のことを炎症後色素沈着と呼ぶのです。
レーザーを照射した1カ月後くらいから現れ始め、元のシミと同じくらい、ないしは元のシミより濃くなることもあります。こうなると「元のシミが再発したのでは？」と不安になる方もいると思いますが、そうではありません。
炎症後色素沈着はあくまで炎症に起因する新たな色素沈着であり、肌の代謝（ターンオーバー）が正常に行われていれば、半年～1年程度で自然と消えていきます。
ただし、加齢やホルモンバランスの乱れなどによりターンオーバーが鈍化している人は、改善に時間がかかるケースや、最悪の場合そのまま残ってしまうケースもあるのが現実です。
炎症後色素沈着をできるだけ起こさないため、そして起きてしまった場合もできるだけ早く解消させるために有効なのが、トレチノイン療法です。
当院では任意の治療となりますが、肝斑が併発している方、ダークトーンの方、ご高齢の方などには、できるだけ実施していただくよう推奨しています。
トレチノイン療法に使用するのは、2種類の外用薬。カサブタが全て取れてから治療をスタートし、2カ月ほど続けることが多いです。
| トレチノイン | ターンオーバーを促進し、メラニンの定着を防ぐ |
|---|---|
| ハイドロキノン | メラニン合成に関わる酵素チロシナーゼを抑制する |
ピコレーザーでのシミ取りで気を付けるべきこと
シミ取りレーザーをしたいと考えている人が知っておくべき注意点がいくつかあります。最後に、レーザー施術を行う前後に気を付けるべきポイントをお伝えします。
肝斑は適応外
シミ取りレーザーが適応でないタイプのシミはいくつかありますが、中でも最も多いのが肝斑（かんぱん）です。
肝斑はホルモンバランスの乱れなどに紐づいて発生するシミで、30～40代の女性に多く見られます。主に頬骨周辺に左右対称に広がって出現し、一般的なシミと比べ境界が不明瞭で「くすみ」のように見えるのが特徴です。
肝斑は皮膚の炎症と密接に関係しており、シミ取りレーザーにより炎症が悪化することで、肝斑が濃くなってしまうことがあります。そのためシミ取りレーザーではなく、レーザートーニングなど低出力のレーザーを使った治療や、内服薬による治療を行うのが一般的です。いずれの治療法もシミ取りレーザーほどの即効性はなく、2～6カ月程度の通院が必要になります。
「普通のシミだと思ってシミ取りレーザーを希望したけれども、実は肝斑だった！」というのは非常によくあるケースで、思っていたよりも治療に時間がかかってしまうことが多いため注意しましょう。
初診は早めに受けるべき
シミ取りレーザーを行う場合、事前に準備期間を設けることがあります。これをプレトリートメントと呼び、1～3カ月程度を要することが多いです。
「この日にシミ取りレーザーを受けよう」と思っていたのに、初診時にプレトリートメントが必要と判断され、シミ取りレーザーを行う時期が後ろ倒しになってしまった…というのはよくあるパターン。これを避けるためにも、早めに診察を受けておくと安心です。
プレトリートメントの具体的な方法は次の通りです。
①トーニングやフォトフェイシャルなどダウンタイムのないシミ治療を行う方法
②トラネキサム酸やビタミンCなどの内服薬を使う方法
③シミに効果的な医療専売化粧品などのホームケアを行う方法
肌の状態や通院できる頻度に応じて適切な方法を見極め、場合によっては複数の治療を組み合わせて行うこともあります。
プレトリートメントを行うことで肌の状態が整い、炎症後色素沈着のリスクを減らしたり、ダウンタイムを最小限に抑えたりといったメリットが得られます。
また一般的なシミと肝斑が併発している場合にも、プレトリートメントにより肝斑を抑え込むことで、肝斑を悪化させることなくシミ取りを行うことも可能です。
少々もどかしく感じる人もいるかもしれませんが、仕上がりを左右する大切な期間なのです。
スキンケアはやさしく丁寧に行うべき
普段から気を付けてほしいポイントではありますが、シミ取り前後は特に守らなければならないのが、丁寧なスキンケア。
シミができる大きな要因のひとつが、肌への摩擦です。クレンジングや洗顔で肌を擦る、化粧水を塗る際に強く肌をたたく、メイクをするときに肌を擦るといった行為は肌への刺激となり、メラニンが過剰に生成される原因となります。
特にシミ取り後は、炎症後色素沈着を防ぐためにも肌への刺激は最小限にするのが鉄則です。以下を意識しましょう。
・強いクレンジング剤が必要となるような濃いメイクは避ける
・洗顔は濃密な泡を立てて擦らず行う
・化粧水、乳液、クリームなどはハンドプレスでなじませる
紫外線対策を徹底するべき
シミ取りレーザーを安全に照射するため、そしてその後の炎症後色素沈着を防ぐために、日焼けは厳禁。こういった観点から、シミ取りレーザーは秋～冬の紫外線が弱まる時期に受けるのがベターです。
しかし、季節や天気を問わず紫外線は地表に降り注いでいるものです。シミ取り前に日焼けをしてしまうと、レーザーの反応が強く出すぎたり、ダウンタイムが重くなったりする恐れもあります。シミ取り前には、紫外線カット効果の高いUVクリームを毎日塗り、紫外線を徹底的に防ぎましょう。
一方でシミ取り後のダウンタイム中は、テープが邪魔して日焼け止めが塗りにくいときもあると思います。テープの上からでも使いやすいスプレータイプの日焼け止めを活用するほか、日傘や帽子なども併用して肌を守りましょう。
まとめ
ピコレーザーによるシミ取りは、従来のマシンと比べ肌ダメージが少なく、なおかつ濃いシミから薄いシミまで幅広くアプローチできる画期的な施術です。さらに内服薬や光治療などによるプレトリートメントを行うことで、より低リスクに理想の仕上がりを目指すことができるでしょう。
シミに悩んでいる方は、ピコレーザーによるシミ取りを検討してみてはいかがでしょうか。
