「肌荒れを繰り返している」「ニキビがなかなか改善しない」「生理前になると肌の調子が悪くなる」など、肌トラブルに悩んでいる方の中には、漢方薬による治療を検討している方もいるのではないでしょうか。
漢方薬は皮膚に現れている症状だけでなく、体力や体調、ほかにみられる症状なども考慮して選択されることが特徴です。ただし「肌荒れ」と一口にいっても、ニキビ・乾燥・湿疹・赤み・かゆみなど、原因や症状はさまざま。そのため、すべての肌荒れに同じ漢方薬が適しているわけではありません。
この記事では、肌荒れに漢方薬を使用するメリットや注意点、症状別に役立つ代表的な漢方薬について解説します。
この記事のポイント
- 肌荒れに漢方薬を使うメリットがわかる
- 肌荒れの症状に適した漢方薬がわかる
- 肌荒れに漢方薬を使うときの注意点がわかる
肌荒れに漢方薬を使うことはできる?
肌荒れに対して漢方薬が使用されることはあります。
ただし「肌荒れ」という言葉は医学的な診断名ではなく、さまざまな皮膚トラブルをまとめて表現した言葉です。例えば、以下のような症状が含まれます。
ニキビ・赤み・乾燥・湿疹・かゆみ・吹き出物・化膿を伴う皮膚トラブル など
これらは原因や治療方法が異なるため、「肌荒れにはこの漢方薬」と一律に決めることはできません。また漢方薬を選択する際には、皮膚症状だけでなく、体力や体調、冷えの有無、月経との関係なども考慮されることがあります。
さらに、漢方薬はすべてのケースで第一選択となるわけではない点にも留意する必要があるでしょう。
漢方薬にまつわるこれらのポイントを理解した上で、症状や治療経過に応じて使用を検討することが大切です。
肌荒れに漢方薬を使うメリット
肌荒れの治療には、保険診療や自費診療、ドラッグストアで販売している市販薬などまで含めると膨大な選択肢が存在します。その中で漢方薬を使うことにどのようなメリットがあるのでしょうか。
症状だけでなく体質や体調を考慮して選択できる
漢方薬は、皮膚に現れている症状だけでなく、その人の体質や全身の状態なども考慮して処方が検討されます。
例えば同じ「ニキビの悩み」の中でも、体質によって次のようにさまざまなケースが考えられますよね。
・白ニキビや黒ニキビが多い
・赤く腫れたニキビが多い
・膿を伴うニキビを繰り返している
・月経前後に悪化しやすい
・ほかの症状もみられる
表面的な症状だけでなく、体質や状況に合わせて細やかな選択ができる点は、漢方薬のメリットと言えるでしょう。裏を返せば、「ニキビだからこの漢方薬」というように単純に選ぶのではなく、症状や体調に応じて選択することが重要です。
保険診療が活用できるものもある
種類にもよりますが、医療機関で処方される漢方薬には健康保険が適用されるものもあり、経済的な負担を抑えて継続しやすいケースがあります。
また皮膚科で行われる標準的な肌荒れ治療と組み合わせて使用できる場合もある点もメリットと言えるでしょう。
肌荒れを治す」というよりも、症状に応じて適切な治療を組み合わせることが大切です。
全身の状態も含めて治療を考えられる
漢方医学では、皮膚症状だけでなく患者さん全体の状態を考慮して薬を選択します。
肌荒れと同時に、冷え性・むくみ・便秘・月経不順など、体全体の気になる症状も整えることにつながる場合もあるのです。
ただし「漢方薬を飲めば体質そのものが必ず改善する」「体の中からデトックスできる」といった表現は、医学的に一律に証明されているものではありません。
漢方薬も医薬品の一つであり、薬剤ごとに適応や期待される作用、安全性が異なります。
【症状別】肌荒れに選ばれることがある漢方薬

ここからは、肌荒れに使用されることのある代表的な漢方薬を、症状・シチュエーション別に紹介します。
ただし以下は一般的な情報です。実際にどの漢方薬を使用するかは、症状や体質、他の治療の状況などによって異なります。
赤みや炎症を伴うニキビ|荊芥連翹湯
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は、ニキビに対して使用されることがある漢方薬です。日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、面皰や炎症性皮疹に対し、他の治療が無効な場合や、他の治療が実施できない場合に、選択肢の一つとして位置づけられています。
ただし、すべてのニキビに使用すべきという意味ではありません。ニキビの状態によっては、アダパレンや過酸化ベンゾイルなどによる標準治療が優先されることがあります。
赤く腫れたニキビなど|清上防風湯
清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)も、炎症性のニキビに対して選択されることがある漢方薬です。ガイドラインでは、炎症性皮疹に対して、他の治療が無効な場合や実施できない場合に、選択肢の一つとして示されています。
ただし、ニキビの程度や状態によって適切な治療は異なります。そのため、「赤いニキビがあるから必ず清上防風湯」と自己判断するのではなく、症状に応じて治療を選択することが重要です。
化膿を伴う皮膚トラブルなど|十味敗毒湯
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は、化膿性皮膚疾患などに使用される漢方薬です。ニキビについても、炎症性皮疹に対する選択肢の一つとして検討されることがあります。
ただし、十味敗毒湯がすべてのニキビや肌荒れに適しているわけではありません。また症状によっては抗菌薬や外用薬など、別の治療が必要になる場合もあります。
月経に関連して悪化する場合など|桂枝茯苓丸
月経周期に伴って肌トラブルが悪化する場合、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などが検討されることがあります。
ただし、日本皮膚科学会のニキビ治療ガイドラインでは、桂枝茯苓丸については「行ってもよいが推奨はしない」という位置づけです。そのため、「生理前に肌荒れするから桂枝茯苓丸を飲めばよい」と一律に判断することはできません。
月経との関連だけでなく、皮膚症状や全身の状態を確認したうえで、医師や薬剤師に相談することが大切です。
黄連解毒湯・温清飲・温経湯などが検討される場合もある
ニキビの炎症性皮疹に対しては、黄連解毒湯、温清飲、温経湯などが検討されることもあります。
ただし、これらについてもニキビ治療ガイドライン上の推奨度は限定的です。漢方薬は種類によって適応や安全性、含まれる生薬が異なるため、自己判断で「肌に良さそうな漢方」を選ぶのではなく、症状に合わせて選択することが重要です。
乾燥やかゆみなどの肌荒れにも漢方薬は使える?
乾燥やかゆみを伴う肌荒れでは、ニキビとは異なる原因が考えられます。
・乾燥による皮膚炎
・アトピー性皮膚炎
・接触皮膚炎
・蕁麻疹
このようにさまざまな皮膚疾患が原因となりうるため、肌荒れをすべて「体質の問題」と考えて漢方薬だけで対処すると、適切な治療が遅れる可能性もあります。特に赤みや湿疹、強いかゆみが続く場合は、まず皮膚科で原因を確認することが大切です。
肌荒れで漢方薬を選ぶ際の注意点

漢方薬に対して「穏やかな治療」といったイメージをお持ちの方は多いと思いますが、漢方薬も「薬」であることに違いはありません。使い方を間違えればさまざまなリスクが生じる可能性もありますので、次の注意点を理解した上で使用しましょう。
漢方薬にも副作用がある
「漢方薬は自然由来だから副作用がない」というのは誤りです。漢方薬も医薬品であり、発疹やかゆみ、胃腸症状などの副作用が起こることがあります。
また含まれる生薬によっては、注意が必要な副作用が生じる可能性があります。例えば甘草を含む製剤では、偽アルドステロン症や、それに伴う低カリウム血症、ミオパチーなどに注意が必要です。
むくみ、血圧上昇、脱力感、筋肉痛などがみられた場合には、服用を中止し、医師や薬剤師に相談することが重要です。
複数の漢方薬を自己判断で併用しない
複数の漢方薬を同時に服用すると、同じ生薬が重複する可能性があります。特に、複数の製剤に甘草が含まれている場合などは注意が必要です。
「市販の漢方薬だから安全」「別の漢方薬なら一緒に飲んでも問題ない」と自己判断せず、複数の薬を使用する場合は医師や薬剤師に相談しましょう。
持病がある場合や他の薬を飲んでいる場合は相談する
漢方薬の種類によっては、高血圧や心臓病、腎臓病などがある場合に注意が必要なものがあります。また他の薬との飲み合わせにも注意が必要です。
現在治療中の病気がある方や、処方薬・市販薬を使用している方は、漢方薬を服用する前に医師または薬剤師に相談しましょう。
妊娠中・妊娠の可能性がある場合は自己判断で使用しない
妊娠中や妊娠している可能性がある場合は、自己判断で漢方薬を服用しないことが大切です。漢方薬の種類によって、妊娠中の使用に注意が必要な場合があります。
また授乳中の場合も、使用する薬剤について医師や薬剤師に相談しましょう。
肌荒れに漢方薬を使うときのポイント
肌荒れに漢方薬を使用する場合は、次のようなポイントを意識しましょう。
・自分の症状に合った薬を選ぶ
・「肌荒れにはこの漢方」と自己判断しない
・用法・用量を守る
・複数の漢方薬をむやみに併用しない
・服用中の薬がある場合は医師や薬剤師に相談する
・改善しない場合は漫然と飲み続けない
・副作用が疑われる症状が出た場合は服用を中止して相談する
市販の漢方薬でも、長期間使用しても改善しない場合には、皮膚科などを受診し、肌荒れの原因を確認することが大切です。
また肌荒れを繰り返している場合、単なる乾燥や一時的な不調ではなく、治療が必要な皮膚疾患が隠れていることがあります。特に、以下のような場合は医療機関への相談を検討しましょう。
・ニキビがなかなか改善しない
・赤く腫れたニキビや膿を伴うニキビが多い
・ニキビ跡や凹凸が残ってきている
・強いかゆみがある
・湿疹や赤みが広がっている
・市販薬を使用しても改善しない
・肌荒れを長期間繰り返している
ニキビの場合は、症状に応じて外用薬や内服薬などの標準的な治療が行われます。漢方薬を使用する場合も、標準治療を自己判断で中止するのではなく、必要に応じて医師と相談しながら治療を進めることが大切です。
まとめ
肌荒れに対しては、漢方薬が治療の選択肢となることがあります。一方で、漢方薬がすべての肌荒れに有効なわけではなく、副作用や飲み合わせにも注意が必要です。
「自然由来だから安全」「肌荒れには漢方が万能」と考えるのではなく、自分の症状に合った治療を選択することが大切なのです。
肌荒れが長引く場合や、症状を繰り返す場合は、自己判断で漢方薬を飲み続けず、皮膚科や医師・薬剤師に相談しましょう。
