みなさんは、亜鉛という栄養素についてどこまで知っているでしょうか?
三大栄養素と言われる脂質・糖質・タンパク質や、ビタミンのようにメジャーな栄養素と比べると、亜鉛の役割を理解できているはそう多くないかもしれません。しかし実は心身の健康を保つために重要な役割を担っているんです。
亜鉛が不足すると、体にはどのような異変が起こるのでしょうか?
今回は、亜鉛不足がもたらすコワイ症状と、その対策についてご紹介します。
この記事のポイント
亜鉛が不足するとどうなる?
まずは亜鉛不足によって起こりうる10の症状を見ていきましょう。もしかしたら、あなたが今抱えている不調も亜鉛不足によるものかもしれませんよ。
肌荒れ
皮膚の約40%はタンパク質(コラーゲン)で構成されています。実は、亜鉛は皮膚のタンパク質の合成において重要な役割を果たしており、亜鉛が不足することで肌の代謝であるターンオーバーが乱れやすくなることがわかっています。
そのため亜鉛不足の状態が続くと、キメの乱れや乾燥といった角質トラブルが起きやすく、肌荒れにつながることがあります。肌がもつ創傷治癒能力がうまく働かず、炎症が長引くことも。
亜鉛は肌の美容と健康に欠かせない栄養素なのです。
抜け毛・薄毛
髪の毛の主成分は、ケラチンというたんぱく質の一種です。
皮膚への影響と同様、亜鉛不足によって新陳代謝が低下すると、タンパク質が十分に生成されなくなってしまいます。
このため新たに生える毛髪の量が減るばかりか、生えてくる毛髪も細く力がない状態になってしまうため、抜け毛・薄毛につながるのです。
貧血
貧血というとまず鉄分不足が思い浮かびますが、実は亜鉛不足による影響も大きい症状です。
亜鉛は血液中の赤血球の生成に関与しています。
赤血球は血液中を流れて全身に酸素を送る働きを担っているため、亜鉛不足により赤血球が減少すると全身に届けられる酸素の量が減り、鉄欠乏性貧血と似たような症状が現れるのです。
鉄分を積極的に摂取しても貧血が改善されない場合は、亜鉛不足による貧血を疑いましょう。
味覚障害
人間が食べ物の味を感じることができるのは、舌に味蕾(みらい)という細胞があるためです。亜鉛は味蕾にも多く存在し、細胞の活性化を助けています。
亜鉛が不足すると、新しく活発な味蕾細胞が生成されず、結果的に味が薄く感じたり、苦みを感じたりするようになります。
他にも、口内炎を繰り返す、唾液の分泌量が減って口内が乾くといった症状も、亜鉛不足が影響している場合があります。
食欲不振
亜鉛が不足すると、消化管粘膜の萎縮や消化液分泌の減少などの消化機能低下が起こります。また味覚障害によって食べ物がおいしく感じられなくなることも影響し、食欲不振に陥ることがあります。
食欲が落ちることで食物からの亜鉛摂取がさらに減り、さらに亜鉛不足が加速してしまう悪循環になることも。食欲不振が続いている人は要注意です。
免疫力の低下
亜鉛は、白血球をはじめとする免疫細胞の生成に必要な成分です。免疫細胞が新陳代謝によって常に新しく作り変えられることにより、私たちの体は病気から守られています。
そのため亜鉛不足により免疫細胞が減少する、または正常に機能しなくなると、感染症にかかりやすくなったり、アレルギー症状が出やすくなったりすることが分かっています。
また、がんの発生リスクが高まるとも言われています。
記憶力の低下
亜鉛は、脳内の情報伝達物質の調整にも関わっています。
私たちの脳は、この情報伝達物質の働きによって記憶を整理し、覚えたことを情報として引き出すことができています。亜鉛不足により情報伝達物質の働きが鈍ると記憶力が低下し、物忘れなどの原因になるのです。
アルツハイマー型認知症患者の方は、健常者と比べて亜鉛が不足しているという報告もあり、亜鉛不足は認知症リスクを高める恐れがあると考えられています。
視力の低下
亜鉛は、目の網膜を構成する成分の1つです。網膜は光を取り込む機能を担っているため、亜鉛不足により網膜の働きが低下すると、目の疲れや視力の低下を招きます。
この他にも、色覚異常やドライアイの原因となるとも言われています。
発育障害
子どもが亜鉛不足になると、発育障害につながる場合があります。これは成長を促す成長ホルモンやテストステロンなどのホルモン分泌量が減少するためです。
成長期に亜鉛が不足することで低身長となるだけでなく、妊娠中の亜鉛不足は胎児の成長に悪影響を及ぼす恐れもあります。胎児の脳の発達遅延や低体重、早産などのリスクが高まるとされているため、妊娠中には意識して摂りたい栄養素なのです。
不妊
亜鉛は性機能にも重要な役割を果たしており、不足すると男性女性どちらにおいても不妊につながる可能性が指摘されています。
男性においては、亜鉛不足により男性機能に関わるホルモンの一種テストステロンの分泌量が低下。女性においては、亜鉛不足により月経周期や排卵の乱れが起こり得ます。
亜鉛が不足しがちな人の共通点
美容と健康の両面で、亜鉛が幅広く重要な役割を果たしていることがわかったと思います。これらの症状が出る前に亜鉛不足を解消し、健康的な生活を送りたいものですよね。
そこで亜鉛不足に陥りやすい生活習慣を紹介します。心当たりのある方は、日常生活を見直してみましょう。
食生活が乱れている
食生活の乱れは、亜鉛不足の代表的な原因です。
特にインスタント食品やジャンクフードに偏った食生活は要注意。こういった食品に多く含まれるフィチン酸やポリリン酸は、亜鉛の吸収を阻害する成分として知られています。
これらの成分が多く含まれる食事ばかりしていると、どれだけ豊富に亜鉛を摂取しても十分な量を体内に吸収することができません。
激しい運動や力仕事をよくする
亜鉛は摂取しても体外に排出されやすい成分です。スポーツや力仕事などでよく汗をかく人は一緒に亜鉛も流れ出てしまい、亜鉛不足に陥りやすくなると言われています。
スポーツや力仕事をする人は一見体力があって貧血とは無縁に感じるかもしれませんが、実は亜鉛不足による貧血の症状が現れやすい人たちでもあるのです。
仕事中や運動中に立ちくらみ、めまいなどを感じることがあれば、体からのサインだと受け取りましょう。
無理なダイエットを行っている
厳しい食事制限や過度な運動などの過酷なダイエットをしている人も、亜鉛不足になりやすいので注意が必要です。
「必要なミネラルはサプリメントで補っているから大丈夫」と考える人もいるかもしれませんが、吸収率が低い亜鉛は、吸収率を高めてくれる他の栄養素と一緒に摂る必要があります。栄養素はそれぞれが補い合って体の機能を支えているため、バランスよく摂ることが大切なのです。
過度な食事制限に頼ったダイエットは控え、運動で汗を流した分は必要な栄養をしっかり摂るよう心掛けましょう。
強いストレスにさらされている
強いストレスを感じると、精神の安定をつかさどる自律神経の働きを正常に保つために、亜鉛を大量に消費します。しっかり亜鉛を摂取しても追い付かず、結果として亜鉛不足になりやすくなってしまいます。
サプリメントなどを活用して亜鉛を摂取すれば、一時的に亜鉛不足は解消されるかもしれません。しかし根本的な原因を解決しなければ、いつまでも亜鉛不足のリスクを抱えることになります。
仕事でストレスを抱えているなら職場環境を変えてみる、人間関係でストレスを抱えているなら1人で過ごす時間を増やす、リフレッシュする時間をきちんと取るなど、ストレスを溜め込まないための方法を考えましょう。
日常的にお酒を飲む
亜鉛は、アルコールが肝臓で分解される際にも消費されます。またアルコールの利尿作用によりトイレの回数が多くなると、それだけ排出される亜鉛の量も多くなります。
そのため日常的にお酒を飲む習慣がある人や、一度に大量のお酒を飲む機会のある人は、亜鉛が不足しがちです。
歓送迎会シーズン、年末年始、夏場などアルコールの摂取量が増える時期は特に注意し、適度な飲酒を心がけましょう。
亜鉛不足を解消する方法
最後に、亜鉛不足に陥らないためのポイントをご紹介します。すでに亜鉛不足の自覚がある人は、これを機に生活習慣を見直してみましょう。
食生活を見直す
食生活の乱れは、亜鉛不足の最も大きな要因です。インスタント食品、ジャンクフード、ファストフードを極力減らし、代わりに自炊を増やしましょう。バランスよくさまざまな栄養を摂るように心がけ、亜鉛を多く含む食材を積極的に取り入れてください。
肉類、魚類、貝類、大豆などの豆類、ナッツ、穀類、チーズ、抹茶など
また梅干しやレモンなどに多く含まれるクエン酸、ゆずやアセロラ、ピーマンなどに多く含まれるビタミンC、まぐろの赤みやヒレ肉、鶏のささみなどに多く含まれる動物性タンパク質と一緒に摂ると、亜鉛の吸収率が高まります。
亜鉛を多く含む食品と、吸収率を高める食品を上手く組み合わせてメニューを考えてみてください。
休肝日を設ける
飲酒の習慣がある人は、例えば1日おきでもお酒を飲まない日を作り、亜鉛の消費量を抑えましょう。これは、肝臓の機能を正常に保つためにも必要なことです。
また一気に大量のお酒を飲むことは控え、適度なアルコール量を心がけながら楽しみましょう。
ストレスを発散する
ストレス社会といわれる現代の中で、ストレスから完全にフリーになることは難しいことです。できるだけ定期的にストレスを発散する時間を作り、溜め込まないように意識しましょう。
カラオケで歌ったり、空気がきれいなところでのんびりしたり、感動的な映画で涙を流したり…自分が好きなことに没頭する時間は、必要なときに力を発揮するための充電時間です。
「休憩するのも仕事のうち」くらいのつもりで、無理をしないようにしてください。
サプリメントを活用する
どうしても食事で摂取しきれない場合は、サプリメントで補うのもひとつの手段です。
亜鉛はなかなか体内に吸収されないため、不足することはあっても過剰になることはあまりありません。とはいえ飲み方や摂取量を間違えるとかえって体に不調をきたす場合もあるため、サプリメントに記載してある用法・用量を守り、正しく摂取しましょう。
まとめ
亜鉛を豊富に含む食材はたくさんありますが、吸収率が低いため、意識して摂るようにしなければ気付かないうちに亜鉛不足になってしまいます。必要であればサプリメントも活用し、亜鉛不足を補いましょう。
美容や健康に不可欠な亜鉛を十分に摂り、充実した毎日を過ごしてくださいね。